『Free Soul T.K.』対談








橋本徹(SUBURBIA)×山下洋(Wack Wack Rhythm Band/Freedom Suite)









橋本
今年で1994年にDJ Bar Inkstickで「Free Soul Underground」というクラブ・パーティーを始めてから、そしてFree SoulのコンピレイションCDがスタートしてから25年ということで……。

山下
四半世紀 !

橋本
四半世紀ということで、いろいろコンピの話をいただいて作っている中で……。

山下
橋本さんからT.K.がいいってリクエストしたの?

橋本
たまたまUltra-Vybeから連絡があって、T.K.のコンピレイションを作れませんかという電話で。同じタイミングでリイシューを何枚かするので、その水先案内人というか、サンプラーというか、話題が広がっていくようなきっかけにFree Soulコンピがなれば、という依頼で。
僕としてはT.K.はレーベル単位では今までコンピを一度も作ったことがなかったけれど、90年代からいろんなFree Soulのオムニバスに、DJパーティーで人気のあったT.K.曲をいろいろ入れていて。それ以降の資料やデータベースが充実して存在感を増していった7インチ・シングル・オンリーの曲とかも、ひっくるめてパッケージできたら、すごい良いものができるなというのがあって、ぜひ喜んでという感じで。当然T.K.ならではのラテンとかカリブ海のフィーリングも入った、パーカッシヴなマイアミ・ソウルのような、ディスコ・ミュージックの隆盛にも寄与していくようなレーベル・カラーを意識しながらも、ベタなディスコ・ヒットとは一線を画すという。

山下
そうだよね、「That's The Way」かけないもんね、うちら(笑)。

橋本
そうそう、KC & ザ・サンシャイン・バンドであれば「That's The Way」ではなく「Ain't Nothin' Wrong」なのがFree Soulのポイントで。そんな気持ちで、パーティー・マインドを宿しながらも、いわゆるディスコ・ヒットとは違った、Free Soulならではのグルーヴィー&メロウなアプローチができたらっていうところで始めて。実際には90年代に山下くんも繰り返しかけていたような曲がたくさん入っているので、今回、90年代のFree Soulコンピのライナーで対談していたような形で、カジュアルに話ができればということで。
まずは、山下くんのT.K.というレーベルに対してのイメージから話そうかな。

山下
まず、イナたいですよね(笑)、イメージとして。リズムとかギターとかも。ちょっとデヴィッド・T.ウォーカーっぽい、リトル・ビーヴァーとかが弾いてるのが多いのかな。デヴィッド・Tっぽい、ためがあって、遅れる、というか。

橋本
レイドバック・フィーリングというかね。

山下
イナたいんだよね、音が。あと音作りもそんなにスカっとしていないというか。そこがカッコよいというか。
最初に意識したのは、KC & ザ・サンシャイン・バンドもそうだけど、やっぱりティミー・トーマスじゃないですか!

橋本
僕も大学生の頃にリトル・ビーヴァーの「Party Down」とティミー・トーマスの「Why Can't We Live Together」を……。

山下
それでしょ! 「Why Can't We Live Together」ですよね、シャーデーがカヴァーした。トシ矢嶋さんと話してても思ったけど、やっぱり、この曲でウケるのが、ピーター・バラカンさんですらも、「なぜ僕らは同棲できないのだろうかって思った」っていう話が面白いんだけど。これは人類愛の歌ですからね。

橋本
ヴェトナム戦争が終わったり、公民権運動も盛り上がった後で、ニュー・ソウルにも通じるテーマ感で。リズムボックスとオルガンで、これだけ地味な抑えた曲調だけど、シャーデーにもカヴァーされたり、1972年当時も全米3位だったりとか、ヒットした時代を象徴する曲だったんじゃないかな。ヴェトナム戦争で疲弊したアメリカの中で、ヒューマンな温もりに惹かれていく、ビル・ウィザースなんかと同時代という感じがする。

山下
マイナー・コードの曲だしね。
シャーデーがこれをカヴァーしたというのがね。その頃まだ世代的にソウル・ミュージック知らなかったから。

橋本
僕らの世代は80年代に育ったから、その頃イギリスのシャーデーに代表されるようなポップ・アーティスト、スタイル・カウンシルもそうだけど、彼らがカヴァーしたり、ルーツとして愛していたソウル・ミュージックを知っていく、という過程があったからね。

山下
今なんか後からわかるんだけど、「Funky Nassau」なんかは、ポール・ウェラーとかジュニアとかみんなでやっているTVライヴの映像があって、まずはイギリス人のセンスに惹かれたよね、俺はたいていそうなんだけど。

橋本
俺もそうだな。マイアミ・ソウルっていうかT.K.の音源もイギリス人の好きなソウル・ミュージック的な感覚で自然に好きになっていった。

山下
ティミー・トーマスはあと、『Urban Classics 2』に、「You're The Song (I've Always Wanted To Sing)」が入っていたよね。

橋本
うん、やっぱりそれは印象に残ってる。イギリス経由のソウル・センスとして。

山下
あの頃『Urban Classics 2』に入ってたのはでかいよね。

橋本
でかいね。DJとかやるようになる前は、そういうティミー・トーマスやリトル・ビーヴァーを通してT.K.に親しんで。他に代表的なアーティストだと、「Rock Your Baby」のジョージ・マクレーとかグウェン・マクレー……。

山下
ジョージ・マクレーの「Rock Your Baby」ってさ、「ロック映像年鑑」ってVHSのヴィデオがあって、1989年に出たんだけど、俺はその1966年版とかを観たくて片っ端から当時レンタルして観ていったんだよ。そしたら1974年とかの一番最後に「Rock Your Baby」入ってたんだよ! 「ロック映像年鑑」ですよ!? だから本当に売れたんでしょ。

橋本
うん、やっぱりT.K.を代表する大ヒットといったら「Rock Your Baby」はすぐ挙がるし、でも全く派手派手しくないし、すごくいいなと。やっぱり「Why Can't We Live Together」とか「Rock Your Baby」から大学生の頃に知ったから、T.K.にはリズムボックスがチャカポコしていて気持ちいいレーベルっていう……。

山下
チャカポコして、しかもチープなね。

橋本
そうチープね(笑)。オルガンもちょっとチープな感じが。

山下
そう、ジャズっぽいハモンドとかじゃないから。なんだろあれ。それもイナたいんですよね。

橋本
そういうところからT.K.だったりマイアミ・ソウルのイメージができあがっていったな。ジョージ・マクレー、グウェン・マクレーだけじゃなくて、それから……。

山下
兄弟多いよね ?

橋本
ミルトン・ライト、ベティ・ライト。そう、ベティ・ライトがやっぱり、そのへんの次だったかな。ソウル・ミュージックとしてT.K.のアーティストを聴き込むようになったのは。

山下
「Clean Up Woman」のレコードってセカンドだっけ?

橋本
セカンドかな、出世作だよね。実際にリリース当時もヒットしていて、「Clean Up Woman」も。

山下
ベティ・ライトは普通にはまって片っ端から聴きましたね。

橋本
たぶんアメリカでもT.K.の歌姫といえば、ベティ・ライトっていうイメージが強くて。「Clean Up Woman」みたいなロール・モデルになるような歌詞のある曲がヒットしたこともあるかもしれないけど。それが結局、この曲をサンプリングしたメアリー・J.ブライジとかに受け継がれたりして。
21世紀に入ってからも、ベティ・ライトはザ・ルーツと組んで復活して、すごくいいレコードを作ったり……。

山下
現役?

橋本
うん、2010年代に入ってもいいレコードを作ってるんだよね。
あとジョス・ストーンをデビューさせたりとか、実は長くキー・パーソンとして活躍してるんだけど、やっぱりFree Soul的にも「Clean Up Woman」だね。あの曲のイントロがいろんな形でクラブやDJの現場を華やかに彩って。

山下
小沢健二!

橋本
うん、そんな感じでいろいろ輪廻転生して。

山下
ベティ・ライトのいい話は、あれだ。ポール・ウェラーのレスポンド・レーベルのデモ・テープの募集で、トレイシーがオケなしで、ベティ・ライトの「Shoorah! Shoorah!」を歌って送ったというエピソードが残ってて。
まあ、あれはコンピに入るような曲じゃないけど、アップテンポで元気のいい曲ですね。それで合格にするっていうのがポール・ウェラー。選曲ですかね、なんでしょうね。1982年とか83年、そのくらいの話です。

橋本
ベティ・ライトは本当にコンスタントにレコードを出してて、ひとつずつ聴いていくと今でもかけられるような曲が1曲くらいは入ってるよね。

山下
グウェン・マクレーもそうだね。

橋本
グウェン・マクレーは90年代初頭はメイン・ソースが「90% Of Me Is You」をサンプリングしていたイメージが強かった。藤原ヒロシさんもDJでかけているという話も聴いたことがあるし。

山下
「90% Of Me Is You」は確か、ジェイムス・P.ヴァイナーに教えてもらった覚えがあるな。「この曲もいいぞ」みたいな。

橋本
ぐっと吸引力があるよね。あとは、その曲の厳密には原曲となるヴァネッサ・ケンドリックのヴァージョンも今回は収録して。こういうのは7インチがディグされるような世の中になって、レーベルのディスコグラフィーがちゃんと資料として整ってくる中でディガーたちに発見されていったね。

山下
やっぱりグウェン・マクレーも裏ヒットですよね。こういうヒップホップでサンプリングとか、レア・グルーヴ的な視点での人ですもんね。

橋本
ベティ・ライトの兄弟のミルトン・ライトもFree Soulが始まってすぐの頃に手に入れて、DJ Bar Inkstickでかけるようになったんだけど、大枚はたいて買ったから、山下くんがバイトしていたVIEW RECORDSの亀田さんに聞いたら、「それは、トゥー・ステッパーズとしてイギリスですごい人気がある高いレコードなんだよね」って教えてもらったりしたことがあるな。

山下
全然知らないものだったね、ミルトン・ライトは。ファースト・プレスとセカンド・プレスがあって、とか。そんな話があって。

橋本
うん、高いレコードを買うということに一歩踏み出したような時期に、よく聴いてDJでもかけたレコードだった。

山下
彼のセカンド『Spaced』は、なんかわかんないけど、売っちゃったな、俺。

橋本
『Spaced』は今回のコンピにも入れた「Be With Me」がものすごくいいんだよね。

山下
今思うとシンセサイザーの使い方とか面白いアルバムで、全体的に。やっぱりあれは持っておいた方が良かったな、と。

橋本
そういえばグウェン・マクレーは山下くんもよくかけていた、あのファンキーなやつ、「All This Love That I'm Givin'」もDisc-2の前半で使ってるね。

山下
あれ結構珍しいですよね? あのレコードは。

橋本
あの曲はリエディットとかでもよく聴いてて。

山下
ピンクっぽいアルバムでしょ? あの曲はブートのコンピに入ってたんですよ。オリジナルは割と珍しいレコードなんですよね。

橋本
『Melody Of Life』はグウェン・マクレーの中でも後期、70年代後ろのレコードだから。

山下
あれ好きなのもイギリス人ぽい。亀田さんに「これいいんだぞ !」って、教えてもらって。なるほどって思った記憶がありますね。

橋本
オマーもサンプリングしてたしね。ニュー・ディスコのエディットみたいなものでもよく題材になる曲なんだよね。

山下
イントロがまずいいしね。すごい印象的でした、なんかレア・グルーヴ的なかなり初期のブートに入ってて。

橋本
グウェン・マクレー、ジョージ・マクレー、ミルトン・ライト、ベティ・ライトあたりだけでも、T.K.はFree Soul的感覚で聴いて重要というのがわかるけど、もともとディストリビューション会社だったから、T.K.ってサブ・レーベルの多さもあって、他にもいろんな要素があるよね。

山下
ブランディが入ってるのが、俺、T.K.って知らなかったもん。これ関係あるの? みたいな(笑)。

橋本
これ、めちゃ人気あるんだよ! 「How Long」、ブレイクも気持ちよくて。

山下
「How Long」って原曲はデブラ・ロウズ?

橋本
そう。「How Long」は本当にすごい人気。特に僕たちより下の世代の生音DJには。

山下
ブランディ・ヴァージョンの方が元気ですよね。これ、何レーベルですか? もうレーベル名覚えてない。権利一緒なんだ? みたいな。

橋本
よく知らないけどKayvetteだね。

山下
もうわかんないすね。これもそうだったんだ、みたいのはちょくちょくありますけどね。ラティモアはわかるけど。

橋本
ラティモアは、それこそ鈴木啓志さんの本、「U.S.ブラック・ディスク・ガイド」でしたっけ? そこで酷評されてて、最初は買わなかったんだけど(笑)、「Jolie」が入っているから聴いて。Free Soul始めた頃、アル・クーパーのこの曲は、ホント絶大な人気だったから。ラティモア・ヴァージョンは、90年代、渋谷系華やかなりし頃の感覚だとヴォーカルが濃かったんだけど、今聴くとちょうどいいんだよね。
ラティモアは「Sweet Vibrations」もホント心地いいグルーヴで、藤原ヒロシさんとUAがカヴァーした当時より好きになってるよ。

山下
ラティモアが「Jolie」をカヴァーしてるってある意味面白いよね。考えてみれば、アル・クーパーって、最初はボブ・ディランでしょ。「オルガン弾いたことねーよ」って。ピアノかと思ってスタジオ行ったらオルガンだった、って話が。

橋本
「Like A Rolling Stone」で思いっきり弾きたおしたら、逆にそれがカッコよかった、っていう。
あと今回は、クラレンス・リードの楽曲が、実は一番多かったんだよね。作家クレジットを確認してたら。

山下
本人も地味ながらいい曲入ってましたね。

橋本
そう。本人の「Ruby」っていうギターが刻んでいる曲もめちゃ良くて。もうブロウフライのエロなイメージは完全にシャットアウトして(笑)。
あくまでもリード・インク「What Am I Gonna Do」とワイルドフラワー「You Knock Me Out」というガールズ・グループ名曲の作者としての一面にスポットを当てて。あんな人が、こんなにいい曲を書くのかっていうのが、このコンピのクラレンス・リード再評価の柱で。ブロウフライって結構最近でも出してたりするから、その衰えなさもすごいなと。

山下
リード・インクのアルバムはレコード屋で売れ残ってて、ふと聴いてみたら、一曲だけものすごい良くて。これは絶対いけるなって思って、DJ Bar Inkstickでかけたらやっぱりものすごい人気になって。

橋本
これは本当に、Free Soulを代表するくらい、俺自身は、オデッセイとかアリス・クラークとかと並ぶくらいDJでかけたレコードだな。最近はこの曲を7インチにしてくれって歳下のDJたちがすごいうるさいんだよ。みんながみんなって感じで。7インチ・シリーズ、この『Free Soul T.K.』から5枚10曲くらい切ろうかって、ディレクターと話してるんだよね。彼らはブランディまで7インチにしてくれっていうからね(笑)。

山下
7インチ好きだよね。みんな。
イギリス行ってさ、コーデュロイのメンバーとかとレコード屋に入ったら、ちゃんと高かったよ、リード・インク。

橋本
日本からの情報の逆輸入で高くなったのかもしれないね。90年代から今に至るまで、女子たちがイントロでワーってなるくらいの曲になったから、何が有名になるかって、本当にわからないよね。

山下
ちょっとハニー・コーンぽいからね。まあ、もうそういうのも、超えちゃってるけど。

橋本
完全に、もうスーパーAクラスのFree Soul人気曲って感じだからね。だからワイルドフラワーとリード・インクで7インチのカップリングってめっちゃいいと思う! HMV record shop 渋谷が、先週末のセールでワイルドフラワーの7インチを超高額で出したそうだし(笑)。
あと、そういうレアな7インチでは、Jazzmanが再発して、多少落ち着いたけど、「Funky Nassau」の前に入れているジェリー・ワシントンの「Don't Waste My Time」が近年のキラー・チューンで。ワック・ワック・リズム・バンドとライムスターの「Wack Wack Rhythm Island」とも相性ばっちり(笑)。南国系のカリビアンなテイストもある、キャッチーな曲ということで、ものすごい人気なんだよね。これも7インチ・シリーズに入れなきゃ(笑)。
あとは例えば、ディープなソウルが好きな年配の黒人音楽ファンには全然違う文脈で人気のあったルー・カートンも、「Island Girl」とかカリビアン・フレイヴァーのいい曲で、最近、アルバムではなくて7インチでかけているな。ロバート・パーマーの「Every Kinda People」みたいな感じで人気あるよ。

山下
ルー・カートンはDJじゃない人が買っているイメージのアルバムだったよね。おじさんのレコード(笑)。

橋本
7インチだと、90年代もよくかけていた、これも最初はイギリスのブート・コンピで知ったロウ・ソウル・エクスプレスの「The Way We Live」とかも最高だね。だから結局、山下くんも僕も、Free Soulっていう総体としてもそうだと思うんだけど、すごくイギリス人のソウル・ミュージック好きとの共鳴みたいなもので、いろんな音楽がセレクトされて、残ってきたということが重要だよね。T.K.でさえそうだから。

山下
うん、別にイギリス人の真似ってわけじゃないんだけどね。

橋本
自然にそっちの方が共感できるっていうことだよね。あとはAOR~シティ・ポップ・リヴァイヴァルとの共振も少しあるかな。Disc-1の中盤以降はそんな感じ。フォクシーも「Let's Love」だからね、使っているのが。そういったブリージン系もT.K.の魅力で。
T.K.って本当にコンセプトやコンパイラーによって、本当にいろんな側面が……。

山下
DJ OSSHYが作ったらどんな感じなんだろうね(笑)。

橋本
そう、OSSHYさんに作ってもらってCDショップに一緒に並べた方がいいよ! 「That's The Way」、「Ring My Bell」、「Get Off」、「Dance With Me」みたいな(笑)。 めっちゃ対照的だけど、でもどっちもT.K.っていう。T.K.の表と裏、表はOSSHYさんかもしれないけど(笑)。
そういえば俺、TOKYO MXのOSSHYさんの番組でたよ。

山下
ちゃんと観たよ!
早見優と盛り上がってたでしょ。

橋本
早見優さんがエルボウ・ボーンズの「Night In New York」に大反応しちゃってさ。トシちゃんの曲みたいでしょって言ったら。しかもロケがマハラジャで(笑)、さすがって。

山下
日曜の昼には最高だって。

橋本
話が逸れたけど、今回は前にコンピ作ってるから外したけどボビー・コールドウェルや、レオン・ウェアもT.K.に作品を残していて、OSSHYさんも好きかもね。
アーバンというかAORやシティ・ポップに接近したような音っていうのも、マイアミ・サウンドというかT.K.の特色で、フォクシーの「Let's Love」もそうだけど、アーバン・リゾート感みたいなものが感じられるよね。片寄明人くんが好きなスパッツとかね。ブルー・アイド・ソウル、ブルー・アイド・ファンク。レオン・ウェアはマルコス・ヴァーリとの共作や、ミニー・リパートンのカヴァーを入れたりしてるけど。
Free Soulの選曲は他にもカヴァーが多いんだけど、テリー・キャリアーの「The Love We Had」とか、ビリー・ポール「Let's Make A Baby」とか、アース・ウィンド&ファイアーの「Can't Hide Love」とかのカヴァーも今回入れていて。

山下
「Can't Hide Love」もいい曲だよね。クリエイティヴ・ソースのもかなりいいカヴァーだよね、冷静に考えたら。

橋本
あれはジャズ・ファンクと並べても遜色ないような強力な推進力のあるグルーヴだね。今回はやはり高額7インチのウィリー&アンソニーの「I Can't Leave Your Love Alone」もクラレンス・カーターのカヴァーだし、カヴァーやサンプリングを追っていく中で繋がってきた、広がってきたT.K.のレーベル像も、感じてもらえたら嬉しいな。

山下
KCの「Ain't Nothin' Wrong」も、ディガブル・プラネッツがサンプリングしてたね。

橋本
「Where I'm From」! 『Free Soul 90s』にも入れた。いまだに「Ain't Nothin' Wrong」はパーティーでかかるからね。それくらい普遍的なグッド・ヴァイブのある曲だなと。あと、Disc-1の20曲目の「What Would Your Mama Say」もよく、Free Soulのパーティーではトゥールーズのヴァージョンがかかってて。

山下
トゥールーズって確かフランスのディスコ・バンドでしょ。

橋本
そうなんだよ。トゥールーズのヴァージョンは確か90年代に作ったFree Soulコンピに入れたけど、今回はファクツ・オブ・ライフを。90年代の後半になると、ブランディの「How Long」とかファクツ・オブ・ライフの「What Would Your Mama Say」あたりがフロアを賑わせてた思い出があるな。
あと、ファンキーなところも忘れたくないっていうところではビギニング・オブ・ジ・エンド「Funky Nassou」とか。

山下
Disc-2の始まりもファンキーでしたね。

橋本
Disc-2の1曲目は、ブギー・ダウン・プロダクションズのブレイクの曲で。この「Cramp Your Style」はディープ・ファンクが好きな人には神みたいな曲だよね。

山下
ジミー・ボ・ホーンもこの「If You Want My Love」は意識したことなかったな。

橋本
これはシングル・オンリーなんだよね。瑞々しいヤング・ソウル。

山下
売れた曲、なんでしたっけ。オルガンの使い方とか全く一緒なんだよね(笑)。ドラムの感じとか。

橋本
T.K.は絶対似ていてスケールアップした曲を出すんだよね。ベティ・ライトなら「Clean Up Woman」と「Gimme Back My Man」なんて成功例で。

山下
ある意味セルフ・リメイクみたいなやつね。

橋本
そうそう。ティミー・トーマスの「I've Got To See You Tonight」は「Why Can't We Live Together」と「Party Down」をかけあわせたみたいだったり、リトル・ビーヴァーのアルバムには「Party Down」みたいな曲が3曲くらい入ってたり。

山下
セルフ二番煎じか(笑)。

橋本
でも唯一ヒット・チャート的にも、Motownの後、ここまで一世を風靡したソウル・レーベルってないんじゃないかな。「That's The Way」入れてないのに言うのもなんですが(笑)。「Boogie Wonderland」なしでアース・ウィンド&ファイアーのコンピを作ったような。実際『Free Soul.the classic of Earth, Wind & Fire』はそうなんだけど(笑)。

山下
入れたら意味ないし。他に任せればいい、そういうのは(笑)。

橋本
それにしても今回のコンピは、これでまた7インチ・シングルとかカットして、それを使って生音を中心にかけているようなDJが盛り上げてくれたらいいなっていう、Free Soulど真ん中感があるなって。

山下
新しい発見もあるよね、やっぱり7インチものですけど。

橋本
ファンキーな感じと、リズムボックスな感じとか、ラテン/カリビアンな感じとか、いろんな要素がちょうど混ざり合っているからいいんだよね。

山下
そうですね、やっぱり地方色なんですかね?

橋本
マイアミのローカル・カラーはあるよね。リード・インクとかワイルドフラワーも、地方だからこそのガールズ・グループだと思うからね。エモーションズになれなかった人たちっていうか。

山下
もう完全にそうですよね(笑)。

橋本
ハニー・コーンになれなかったリード・インクとエモーションズになれなかったワイルドフラワーを、僕は愛してやまない(笑)。

山下
それはある意味、Free Soul的、いわゆるレア・グルーヴ的な価値観でもあるよね。王道というより秘宝っていうか。

橋本
なんかこう、ローカル・グループで、アルバムに1曲かもしれないけど、ものすごい宝石が光っているみたいな。

山下
売れてないのに。ヒット・チャート関係ないのに。

橋本
そういう曲がコンピレイションに入れられて、たくさんの人に聴いてもらえるっていうのは嬉しいことだな。
では山下洋の考えるT.K.3曲を挙げてもらって締めますか! 3曲ってなかなか難しいかもしれないけど。

山下
やっぱり、リード・インクでしょうね。
あとは「You're The Song (I've Always Wanted To Sing)」かな。
あと、やっぱり「Rock Your Baby」か。

橋本
3曲だとあんまり違いが出ないね。僕は結構山下くんのDJプレイで、本当にT.K.のこういう側面を教えてもらったり、楽しませてもらったっていうところがあって、僕から見ると今回のコンピには“山下クラシック”っていうのがたくさん入っているんだけど、自分が体現していたFree Soulの王道よりも、ちょっとファンキーめの曲を山下くんがかけていたっていう印象があって。Disc-2の2曲目のグウェン・マクレーとかもそうだし。

山下
ベティ・ライトの「Gimme Back My Man」も結構かけてた覚えがある。

橋本
かけてたよ ! 「Clean Up Woman」より「Gimme Back My Man」の方が実は俺も好きかも(笑)。

山下
「Clean Up Woman」はかけたことないですよ、僕(笑)。

橋本
俺も(笑)。イントロで女の子が喜ぶのにね。

山下
このLPだと「Where Is The Love」とか好きだったかな。

橋本
だいたいさ、VIEW RECORDSに行くとさ、値札のところに曲目が入っていたりして、それでその曲を試聴するとだいたい買ってたね。
そこに書いてあったような曲がたくさん入っているコンピっていうことかもしれない。90年代の前半にレコード屋に行って、それまでのソウル・ミュージックの聴かれ方、紹介のされ方とは違う、グルーヴとかメロウネスみたいな観点で音楽を掘っていくときの気持ちの加速感や、ワクワク感を彩ってくれた曲がたくさん入っているのが、『Free Soul T.K.』かな。
そんなに高くなかったアルバムが多いから、ちょっとずつ買っていけて、そんな中に1、2曲はDJでもかけたくなる曲が入っていたのが嬉しかったな。Disc-1の2曲目に入れたサーティーンス・フロアのチャカ・カーンのメロウ・カヴァーとかもすぐ反応したからね。ソウル・ミュージックを心地よいグルーヴ感っていう観点で、改めて楽しんでいこうっていうときに基準になったような曲がずらっと並んでいるっていう。

山下
ハーマン・ケリーも「Dance To The Drummer's Beat」じゃないんだね。あのアルバムは「Shake Your Love」とどっちもいけますけどね。

橋本
もちろんDJパーティーでは「Dance To The Drummer's Beat」がよくかかったけど、やっぱり『Ultimate Breaks & Beats』の印象が強いかなと思って。Free Soul的にはこっちの「Share Your Love」だよ、という方がイメージに合ってるし、実際フロアにも好かれていた印象があるんだよね。ハーマン・ケリーは結構高かったイメージもあるけど。

山下
高いですね! 初めから高いレコードだった。

橋本
高かったから『Ultimate Breaks & Beats』に入ってない曲で、Free Soulらしくかけられる曲がないかなって思った記憶がある。そんなことの積み重ねから、この『Free Soul T.K.』の選曲は育まれていったってことですかね。何より25年経ってもコンピを作り続けられていることに、本当に感謝しています。

『Free Soul T.K.』
監修/選曲:橋本徹(SUBURBIA)



[release]2019/11/06
[price]¥2,300+tax
[format]2CD
[cat]CDSOL-5682

Disc-1
01. Wildflower / You Knock Me Out
02. The 13th Floor / Sweet Thang
03. Betty Wright / Clean Up Woman
04. KC And The Sunshine Band / Ain't Nothin' Wrong
05. Latimore / Jolie
06. Reid, Inc. / What Am I Gonna Do
07. Timmy Thomas / You're The Song (I've Always Wanted To Sing)
08. Milton Wright / Keep It Up
09. Raw Soul Express / The Way We Live
10. George McCrae / Rock Your Baby
11. Little Beaver / I Like The Way You Do Your Thing
12. Jerry Washington / Don't Waste My Time
13. The Beginning Of The End / Funky Nassau, Pt. 1
14. Herman Kelly & Life / Share Your Love
15. Lew Kirton / Island Girl
16. Milton Wright / Be With Me
17. Paulette Reaves / Jazz Freak
18. Foxy / Let's Love
19. Brandye / How Long
20. Facts Of Life / What Would Your Mama Say
21. Latimore / Sweet Vibrations
22. Little Beaver / Party Down, Pt. 1

Disc-2
01. All The People feat. Robert Moore / Cramp Your Style
02. Gwen McCrae / All This Love That I'm Givin'
03. Willie & Anthony / I Can't Leave Your Love Alone
04. Betty Wright / Gimme Back My Man
05. Spats / Street Love
06. Little Beaver / Concrete Jungle
07. Gwen McCrae / 90% Of Me Is You
08. Milton Wright / The Silence That You Keep
09. Betty Wright / Tonight Is The Night
10. Timmy Thomas / I've Got To See You Tonight
11. Leon Ware / Love Is A Simple Thing
12. Tropea / Can't Hide Love
13. J.P. Robinson / You Can Be A Lady
14. The Billion Dollar Band / Love's Sweet Notions
15. Clarence Reid / Ruby
16. Irene Reid / You Made Me Want To Dance
17. Jimmie "Bo" Horne / If You Want My Love
18. Johnny K / I Got Bills To Pay
19. Vanessa Kendrick / 90% Of Me Is You
20. Charles Johnson / Good Good Lovin'
21. Leon Ware / Inside Your Love
22. Freddy Henry / The Love We Had (Stays On My Mind)
23. Funky Brown / Let's Make A Baby
24. Timmy Thomas / Why Can't We Live Together







Infomation





■パーティー情報

Free Soul 25周年記念「Free Soul Rhythm Island」
日時:11月29日(金)24時から翌5時まで
場所:渋谷・duo MUSIC EXCHANGE
出演:Live / Wack Wack Rhythm Band
      TAMTAM
      DJ / 橋本徹 (SUBURBIA)
          山下洋 (Wack Wack Rhythm Band/Freedom Suite)
          DJ JIN (Rhymester)
          松田chabe岳二 (cubismo grafico/LEARNERS)
          中村智昭 (MUSICAANOSSA)
          松下大亮 (Flight Free Soul)
          aribo (Flight Free Soul)
          BEN (Noa Noa/Piece of Peace)









Profile




■橋本徹(SUBURBIA)

編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。サバービア・ファクトリー主宰。渋谷の「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』『音楽のある風景』『Good Mellows』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは340枚をこえる。USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」「usen for Free Soul」を監修・制作。著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。
http://apres-midi.biz