Ava Mirzadegan_Dark Dark Blue





Ava Mirzadegan
Dark Dark Blue [帯・解説(岡村詩野)・歌詞対訳(多屋澄礼)/ボーナストラック2曲収録/国内盤CD]


メガネと大きな瞳はひそやかな主張。新時代のジュリー・ドワロン、アメリカの柴田聡子(?)、歌と本が武器たるフォーク・シンガー、アヴァ・ミルザデガン、ひそやかにデビュー。

深い蒼色のジャケットを見て、誰もが思い出すだろう、ジョニ・ミッチェルの名作『ブルー』。ただ、本作はより暗いダーク・ダーク・ブルー。この中から浮かんでくるのは、夜明けなのか日没後なのか……暗がりの建物の中に一つだけ明かりが灯る窓……このアルバムはまさにその部屋の中から聴こえてくるかのようだ。この窓の向こうには、きっとメガネをかけた、少しボサボサ頭の目の大きな女の子がいて、椅子に座ってアコースティック・ギターをボロン、ボロンと鳴らし、机の上の古い本に時折目を落としながら、ギターの音に言葉を乗せて歌っているに違いない……。これが正式なデビュー・アルバムになるアヴァ・ミルザデガン。フィラデルフィアを拠点とするシンガー・ソングライターだ。新世代の女性アーティストが次々と登場し活躍する近年、その中でもこのアヴァは指弾きのナイロン弦ギターに、そっと言葉とメロディを重ね、自分自身に語りかけていくようなスタイルが実に奥ゆかしい。ヴォーカルはどこまでも呟くかのように静謐でストイックで……ジュリー・ドワロン、タラ・ジェイン・オニール、アイダ、イノセンス・ミッションあたりを思い出させる。あるいは、厳かでロマンティックで、大いに寂寞を讃えた、ニック・ドレイクやカレン・ダルトンといった大先輩たちのことも。□重要な人間関係が終わりを迎えたときに書かれたというこのデビュー・アルバム『ダーク・ダーク・ブルー』は、共依存と不規則な愛着のパターンを見つめ直しながら、コード・クラスターと失恋の山の上で呼び起こされる内的・外的なやりとり、記憶、会話(あるいはその一部)を記録の物語だ。人間同士のつながりに苦悩し、主に幼少期の寝室から書かれたこのアルバムを通して、彼女はその傷を分かち合い、他者と共有しようとする。満たされなかったニーズ、不適応な傾向、見当違いの愛着についての探求を言葉と歌とギターの音に込める彼女。なのに、他者への非難をほとんど浴びせない奇跡。弱々しくも、丁寧に音を重ねて愛情たっぷりに歌うアヴァは、若い恋人たちの悩みにもそっと寄り添う。彼女は、まるで私たちに自分自身についての真実を語らせる友人のようだ。□先行曲「Book Song」はアメリカの小さな本屋でロケーションされたPVが静かな話題を集めた。本を手にとって朗読するかのように歌う、その映像のアヴァ自身を見ていると、まるでセラピーを受けているかのように穏やかな気持ちになる。□本作を本国アメリカでリリースするのはブライト・アイズのコナー・オバーストによるレーベル「Team Love」。今や「ANTI-」に移籍して活躍を続けるニューヨークのジョアンナ・スタンバーグを送り出した名インディーズがこのアヴァに声をかけた。日本ではそのジョアンナのファーストや、ジ・エーズ、モーリー、キャロルなどアメリカの良質な女性シンガー・ソングライターの新人を多くリリースする「ハヤブサ・ランディングス」がアヴァのデビューをサポートする。2024年、ひそやかに、でも熱く応援したい注目のアーティストだ。


01. Lover Begs
02. Katherine Knows
03. Dark Dark Blue
04. She’s Still
05. Book Song
06. Good
07. Down
08. I Don’t Want to Fight
09. Sleeping Through the Afternoon
10. She’s STILL(Demos)*
11.Good(Demos)*
*=bonus tracks


[release]2024/02/28
[price]¥2,400+tax
[format]CD
[cat]HYCA-8068
[genre]洋楽/ROCK・POP