K.M
EN ROUTE
ボキャブラリー豊かでタイトなライミングの応酬 小手先に頼らない前のめりなビートアプローチ ハングリー精神剥き出しの正面切るアティチュード... アルバムというアートフォームにこだわり、Japanese Hip Hopの強度と底力を突きつける名古屋のラッパー:K.Mのサードアルバム。
今作も1曲目の"Here We Come"から、そのK.Mらしい語気を緩めない大胆不敵な言葉選びは健在だ。そのフィロソフィーは"Get Ready"から"Death Dance"で強固に顕示されており、"What I Need"と"Turn It Up"で逆境を跳ね除けてインディペンデントを体現していきながら、"The Formula"へと活路を見い出していく。また、隠し味のように"Addiction"に効かせられたユーモアもK.Mらしさに溢れており、前半のハイライトとして印象深い。"Go Hard"と"Authentic"を聴いて、胸が熱くなるヘッズ達も多いことだろう。しかし、"Ray Of Sunshine"からアルバムとしての局面は変わり始める。"Break"のセンチメンタルでゆったりとしたビートもさることながら、情景描写が交え始められたそのリリックには、K.Mの日常的で懐古的な一面が見え隠れし始めるのだ。その象徴として、"Home Town"で故郷を"憎んでも愛してしまう場所"と形容した、内面に潜む弱さや寂しさをも受け入れて紡がれたリリカルなラインには、思わず胸を打たれる。また、アルバムの構成であり、そういったリリックの一語一句を念頭に置いて"Underdog Show"の世界に浸ってみると、単体のストーリーテリングとしてや、今回提示されたその作家性だけに聴きどころを見出すわけにはいかなくなるだろう。さらには"Dedicate"で、「感動を書き溜めな 不満不平ばかりじゃ Beatが泣いてるぜ」と歌っているとおり、ここまで曝け出してきたコンプレックスやフラストレーションさえも、最後は"Higher"でポジティブに昇華されていく。そして、HIP HOPに光や希望を見出し続けるその自らの生き様であり、現在進行形で深まっていく死生観が語られた"The Purpose Of Life"へと帰結するのである。つまり、このアルバムは1曲1曲で意義や主張が独立していながら、やはりアルバムである以上は、"ただ1曲1曲を並べただけのプレイリストではない"。センス豊かで個性的なビートメーカー達や、実力派で腕利きのラッパー達に感じるシンパシーから派生した相乗効果も含め、このアルバム1枚を最初から最後まで通して聴き終えた時に、HIP HOPという音楽の強度と底力を再確認することになるだろう。Text by TAKURO SHINOHARA
01. Here We Come [Pro. brian'BC'carter]
02. Get Ready [Pro. Mr.蓮]
03. Death Dance [Pro. brian'BC'carter]
04. Turn It Up feat. HANZO REIZA [Pro. brian'BC'carter]
05. Go Hard feat. TOSHI MAMUSHI [Pro. DIRTYDIGGS]
06. Addiction [Pro. brian'BC'carter]
07. What I Need feat. JERHELL [Pro. brian'BC'carter]
08. Authentic feat. FFL [Pro. 泰山北斗]
09. The Formula [Pro. Sugimori Takaaki]
10. Ray Of Sunshine [Pro. DJ ROOPE]
11. Break [Pro. DIRTYDIGGS]
12. Never Will [Pro. DIRTYDIGGS]
13. Home Town [Pro. Mr.蓮]
14. Underdog Show [Pro. brian'BC'carter]
15. Dedicate [Pro. DIRTYDIGGS]
16. Higher feat. DUSTY-I [Pro. brian'BC'carter]
17. The Purpose Of Life [Pro. brian'BC'carter]
[release]2019/11/13
[price]¥2,000+tax
[format]CD
[cat]CDKM002
[genre]邦楽/J-HIPHOP